無知蒙昧

読みたい本をすきなだけ

びっくりする程本を読んでいない

お久しぶりです

最終更新6月て。サボりすぎだ!すみません。
下書きを見ると本の感想ひとつ、『夜は短し歩けよ乙女』の感想(4月)、『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』の感想(これは8月)、計3つが私の帰りを待っていました。
映画ふたつの感想は今更感あるし正直覚えてないのでさよならです。本の感想はまあ、ぼちぼち…


意外にPVある

はてなカウンター(って言うんだっけ?)。これほんとなんですかねえ?こんなに需要あるわけないと思うんですけど…
ちゃんと更新してた時より大幅についてる…
もし本当ならありがとうございます。


やることなすことに周期がある

これめっちゃ前の雑記でも書いたんですけど、私は本当に周期でまわっているんだなあと最近思います。

ちなみに今はちょっとやることやっとこうかな〜という周期です。具体的には学業ですね。英語とか、プレゼンの準備とか。
私はすこし前から合唱をやっているのですが、その方面もしばらく忙しかったしこれからも忙しいです。モチベーションも高め。当分合唱の周期からは逃れられなさそう。
バイトに行きたい周期は逆に当分来なさそうですが、お金がないので行かねばなるまい…笑


問題は読書に関して。マジで読まなくなりました。正確には読んだことのない本を読まなくなった、かな。
読んだことある本は大体繰り返して読む派なのですが、それは何故かというと多分「いちど体験した安心感」のせいだと思います。

最近Netflixを入れたのですが、勿体ないことに観たことない作品をあまり観ていないです。「今度観よう」とマイリストが増えるだけ。積読と一緒。


もう読書に限らないのですが、触れたことのない作品に手を出すのが年々難しくなっている。エネルギーの消費がすごいんです。ただ忙しいだけなのか、色々な楽しみを知り始めたからなのか、分からないけれど。

ただ、いざ手を出すと楽しいんです。大学で小説を扱う授業があったので、その為に取り敢えず読み始めたら楽しかったんです。私の心はまだしんでいない。
今度はその本のレビューを書こうかな。んは。

本棚の整理をしたい話

そもそも整理整頓ができない

読んだら読みっぱなしなところがある。
あと大体1回読んだ本は続けて3回ぐらいは読むので、すぐ手に取るところに置いておきたい感じもある。

でもまあ、好きな本が増えるに従って、本棚もそれに合わせて綺麗にしたいなあという欲が増したので、そろそろ本棚の整理に着手しようかと思い至りました。

今使っている本棚

家の中にふたつあります。

こちらは私の部屋にある本棚。

ほぼ漫画じゃねーかというツッコミはなしで。笑
左上2段は好きな漫画、下1段はしゃばけシリーズとかチーム・バチスタシリーズとか、大きめの本。プラス絵を描く時に参考にした写真集と図鑑。最近読んでいない本も大分混じってます。まだ読んでいない本もここに。

右上段はHUNTER×HUNTERオンリー。笑 連載再開おめでとう!
中段はCDと資料系の本。でも殆ど聴いていないので片付ける余地アリ。
下段は楽譜と雑貨です。ここも片付けたい。


上の方。

前の方に森見登美彦の文庫本と、京極夏彦作品。
後ろに、新井素子森見登美彦の大きい本、京極に隠れてほぼ見えないけど笑、貫井徳郎作品が置いてあります。
ファンタビのスクリーンプレイも何気に混じっています。


もうひとつはリビングにある家族共用の本棚。
家族の本がかなり全面に出ている(ほぼ少女漫画)なので写真は載せませんが。

私の本の中でも、青い鳥文庫、YA!ENTERTAINMENTみたいな中学生の時に読んだ本が入っています。あとハリポタ。
そういえば、はやみねかおるさんが好きでよく読んだ記憶。怪盗クイーンシリーズとか、夢水シリーズ、都会のトムソーヤとか…はやみね作品はバイブル。
香月日輪さんの『妖怪アパートの幽雅な日常』も好き。

今持っている本を分類する

大体この4つに分けられました。

*まだまだ読みたい本
*もうあんまり読まないけど本棚に置いておきたい本
*捨てたくないけど当分読まない本
*もう読まないし正直いらない本(課題で使った新書)

上2つを私の部屋の本棚に、それ以外を共用の本棚に入れていこうかなと思います。
CDも片付けて(捨てて)、漫画類もまとめて違う場所に置きたいのですが……場所あるかな笑
新しい棚欲しいなあ……


暇になったら整理しようかと思います。日曜日辺りかな?
バイトとサークルとテストがそこそこ詰まっているのでいつになるかな。(書いてて大学生してるなと思った一文)
本棚を整理して読書をしたい周期に自分を持っていきたいのですが、それどころじゃなくなるかも。

まあ近いうちに。

最後までお付き合いいただきありがとうございました。

読書メーターをはじめました

読書メーターとは

自分の読んだ本を登録し、レビューを書いておけるサービス。読んだ本から1日に約何ページ読んだか、何冊読んだかがグラフ化されるので達成感的なものも得ることができます。

似たようなサービスでブクログというのもありますね。

なんではじめたの?

なんとなくとしか言いようがありません。笑
でも自分が読んだことのある本をひとつひとつ登録していくと、そのレビューも共に目に入ってくるんですね。
ああこんなシーンあったなあ、と思い出すうちに再読したい本が一気に増えました。

ただ、読書メーターを使ってレビューを書くことはしないつもりです。
だって上限が255文字しかないんだもん。笑 綺麗にまとめきれる自信がない。
本の感想に関しては、ここで書きたいように整理して書くのが自分にあってるかなあと。

とはいえ他の人のレビューを探してにやにやするのにはとても便利です。便利に使わせてもらってる分、読書メーターにも感想を書こうかなあ。迷うなあ…
自分だけタダで(タダだけど)使っているみたいで、なんだか後ろめたい。

というわけで

こちらが私のページになります。↓
Too_wt_ooT - 読書メーター

今のところ特に好きな作家さんの作品だけ登録していますが、思い出したらその都度「読んだ本」リストに登録していくつもりです。

気分が乗らないとなかなか本を読み始めない質なので、これが日常的に本を読むきっかけになるといいなという所存であります。

最後までお付き合いいただきありがとうございました。

20の短編小説/小説トリッパー編集部 を読みました

アンソロジーならではのつまみ食い、カタログ感

私は元々あまり短編小説を読まない質なのですが、最近食指がそちら方面に向いており、ついにアンソロジーに手を出してしまいました!もりみー目当てです笑

恥ずかしながら既読の作家さんはもりみーこと森見登美彦さんだけでほぼ初読の方ばかりでしたが、この人の長編読んでみたい!と思う作品ばかりでした。
「この人気になるけどいきなり長編読めるかな…」という人におすすめのアンソロジーです。名作家カタログ。

人気作家20人が「20」をテーマに短編を競作。恋愛、SF、ミステリーなど、エンターテインメントの魅力を凝縮した作品から、ジャンルに収まりきらない現代小説まで、書き手の持ち味を存分に味わいながらも、読み手のイメージが鮮やかに裏切られる、最強の文庫オリジナル。

気になる作家陣はこちら。錚々たる面々。↓

朝井リョウ/阿部和重/伊坂幸太郎/井上荒野/江國香織/円城塔/恩田陸/川上弘美/木皿泉/桐野夏生/白石一文/津村記久子/羽田圭介/原田マハ/樋口毅宏/藤井太洋/宮内悠介/森見登美彦/山内マリコ/山本文緒

つよい!


気になってたあの人、全然知らなかったこの人

「20」をテーマというコンセプトですが、その捉え方も様々。20年、20本、20人、20駅、20番、20歳…
大きくテーマに据えられていたり、物語のあちこちに散りばめられていたりと、作家の個性が二十人二十色で発揮されております。

個人的に朝井リョウさん、羽田圭介さんが気になっていたので読めてよかったです。あと失礼ながら存じ上げていなかった津村記久子さん、宮内悠介さんの作品が結構好きでした。

読書好きの方は既読の作家さんばかりかもしれませんが、短編と長編での雰囲気の違いを比べてみるのもまた一興。新規開拓にも、原点回帰にもおすすめできる1冊です。


ここから1話ごとに感想をずらずらと。
軽いネタバレあります。



朝井リョウ『清水課長の二重線』

1話目からやさしいストーリー。普通にイイハナシダナー。
20年前と二重線をかけてくる捻りはさすが。社会人4年目の微妙な立ち位置とまだ少し残るフレッシュさを感じました。
最後の一文が爽やかで好き。元気な時に読みたい作家さん。

そして、十年前の清水課長もきっとそうしたように、ノックしたボールペンの先を、定規に沿ってすうと滑らせた。


阿部和重『Across The Border』

中身はすべて干からびた指だった。

ちょっとグロい。救いがないので嫌いな人は嫌いかも。読んでて指の関節がむずむずしました。
争いの不条理感。珍しくいいことしたら捕まっちゃった工芸美術家さんドンマイという感じ。

伊坂幸太郎『if』

オチが綺麗についていて、胸がすっとする話。
「腰抜け」のシールを背中に貼られている感覚、という表現がやたらしっくりきました。
パラレルワールドかと思ったら未来の話でした。前向きな終わり方の話はやっぱり最後の一文がいい。

今度こそは自分をがっかりさせてはならない。


井上荒野『二十人目ルール』

オ、オチはー!?となった作品。笑
今更言えないクリームシチューのこととか、印象深い表現はたくさんあったのですが、その分はっきりしたオチが欲しくなってしまいました。像が浮かばない、というあたりにヒントがあるのか。
なんでも分かっているからこそ言わない家族の優しさということなんでしょうか。取り敢えず孫が優しい。ちなみに私もクリームシチューは苦手です。笑

顔を上げて咲子を見たとき、この娘はとうからわかっていたのだ、ということを私は悟った。娘だけじゃない、あらぬほうを見ている孫もだ。それに今回だけじゃない、きっと毎晩私の話を聞くときは、いつもわかっていたのだ。


江國香織『蒸籠を買った日』

こういう白昼夢的な話は大好きです。情景描写が繊細。
あなたの髪はまた伸びる、生きてる人の髪、という表現にすこしホラーを感じる。
耕介さんと井上さんの話はどうなったのかな。

そうなのでしょうか。だとしたら随分凡庸です。ゆるぎなく白昼の車内なんて。だってほら、こっちの方が、ずっと深い美しさをたたえています。


円城塔『十二面体関係』

書きたいことを書いたんだろうなあというのが滲み出てくる。正直訳わかんなかったので逆に長編を読みたくなってきました。笑
藪の中的な話なのかと思ったのですが、そういう訳でもなさそう。

尾津の理解によれば、現在の自分と過去の自分は、この宇宙と隣の宇宙の自分と同じような関係しか持たず、それ自体は不変であるが、意志の力でどれかを選び取ることができる。


恩田陸『悪い春』

吉屋さんが謎い。新しい時代=春ということなのか。
ボランティアというすこし捻れた言葉と、徴兵制を掛け合わせてくるリアルなセンスが好き。他の作品も読んでみたいです。雰囲気がとにかくすき。

分からない──何かが矛盾している。何かが間違っている。
それとも、そう思う筆者が間違っているのだろうか。


川上弘美『20』

女性らしい文だなという印象。子供特有のマイルール。自分にもこういうルールがあったなあと思い出されるどこか懐かしい話。
お父さんと仲良しのりらちゃんが微笑ましい。

なんといっても、カラスの鳴き声ほどちゃんと決まってぴしっとした数字は、この世界には、なかなかみつからない。


木皿泉『20光年先の神様』

めっちゃいい。「20」が大きくテーマにとられているのもいい。昔の苦い記憶、子供ながらの残酷な祈り。悲しいけれど閉塞感のない雰囲気が好きです。神様はいる。

たとえ、神様に届くのが二十年先でも、今の心はこんなに穏やかだ。


桐野夏生マダガスカル・バナナフランベを20本』

別れたいけどいざとなると離れ難いもだもだした関係が上手く書かれているなと思いました。
バナナフランベで想像する落合さんに笑いました。結局お互い嫌なことを言い合える仲になれそうでなれないんだろうなあ。聞くに耐えない下手な歌の書き方もリアル。

涼子は「たいしたもんだよ」と呟いて、陶然と歌う女性を見つめた。


白石一文『いま二十歳の貴女たちへ』

小説じゃなくてエッセイという印象。白石さんには悪いけど、今の女子大生はこういう話に関しては大分食傷気味かと。
説教臭いと感じてしまうのは私がまだ若いからか。不倫を引き合いに出すのも、なんかなあ…

貴女の人生には正解がありません。


津村記久子ペチュニアフォールを知る二十の名所』

不気味な雰囲気がすき。ただ谷の案内人が事件を隠そうとしているのか説明してくれているのかどっちつかずかなとは思いました。
「関係ないですよ?」「違いますったら。」うわー白々しい!笑

はいはい、パワースポットをお探しとのことですね。どちらにも行き尽してしまったからと。それならばここ、ペンシルベニア州ペチュニアフォールのペチュニアの谷がおすすめです。


羽田圭介『ウエノモノ』

初読でしたが羽田さん結構好きかも!リアルな生活感を書ける作家さんが大好物。「20」を散りばめつつ、最後は綺麗にまとめるのでいい。他の作品も読んでみたい。

「ウエノモノですけど」


原田マハ『ブリオッシュのある静物』

あたたかくてやわらかい話の中に、誰からも慕われた女性の死が静かに横たわっている。いい話。
死ぬ間際まで美しくあったタマコさんの描写が細やかで優しい。
ちょっと「20」が薄すぎるような気はしました。

「あのねえ。私、ずっと隠してたけど……学芸員の資格、取ったのよ」


樋口毅宏『人生リングアウト

私はプロレスについてあまり明るくないのですが、とにかく勢いのある筆に乗せられて1番さらさら読めた話です。次々出てくる苦労エピソードに惹き込まれました。カトウさんが意外にいいやつですき。プロレスという舞台を演じる役者たちの生きざま。

俺はまだまだリングを降りるつもりはない。企画、構成、出演、総合演出を任された、こんな楽しい仕事が他にあるか。


藤井太洋『ヴァンテアン』

DNAとか遺伝子の話が出てきてうわ読めるかな、と思ったのですが、わりかしわかりやすかったです。
バイオハックって響きがすき。SF独特のずんずん進んでいく感じ。

アジア随一のバイオハッカーは、どうやらサラダにご執心らしい。


宮内悠介『法則』

面白い!ヴァン・ダインの二十則をあらかじめ知っていて得した気分になりました。
最後のジェシカの誤解。こういう思い違いで絶望に落とされる展開好きです。主人公は渇きで死んでしまったのかなあ。それなら事故死カウントはされないような気がするのですが…

あのときオーチャードを殺せなかったのは、僕が使用人であったからなのだ。


森見登美彦『廿世紀ホテル』

本命〜!全てがかわいいでできている。
時代は違えど、いつも通り京都の大学生の話。二十ではなく廿なのがよき。
オチがちょっと薄いと感じる人がいるかも。

「お嬢さん、廿世紀ですよ」


山内マリコ『もう二十代ではないことについて』

鳥飼さんいいキャラしてるなあ。笑
迷いながらもなんだかんだ自分の道を進めている主人公。応援したくなります。引越しもしたくなりました。

探してばっかりの二十代。でもいつの間にかあたしは、見つけてしまっている。探していたはずのもの、ほとんどすべてを。


山本文緒『20×20』

ほのぼのに落ち着くんだと思ってたらわりと怖いオチでした。笑 身の回りのすべてを20×20に詰めこんで、売る。闇深いなあ。
ネガティブな言葉をリズミカルに呟くシーンが好きです。私もよくやります。楽しいよね。

原稿用紙一枚は二十字×二十行の四百字。それがこの仕事の単位だった。




おわりに

豪華な執筆陣ながら、意外と当たり外れが大きい短編集だな〜という感じでした!
この人は短編より長編を読みたいというパターン、短編が面白いから長編も読みたいというパターン…あれ??笑
20話もあるので食指に合う物語だけを読み潰すのもまたよき。
面白い一冊でした。

最後までお付き合いいただきありがとうございました。

失踪症候群/貫井徳郎 を読みました

私事(読み飛ばしてください)

最近貫井さんばっかり読んでしまう〜!!ああ〜!
私事になりますが、今月から大学生になりまして大分多忙になり、元々更新頻度の少なかったこの覚え書きもほぼ放置状態になってしまいました。
でもちゃんと好きな人は読み進めているのです。貫井作品たのし〜。

好きな人繋がりで、先週森見登美彦さん原作の映画『夜は短し歩けよ乙女』を観てきました。ちゃんと特典ももらってきました。もりみん書き下ろし……♡
ただ、公開2周目(14日〜)からまた特典変わるので、来週2回目観たら感想的なものをあげようかなと思っています。たぶん。


貫井徳郎の丁寧さとエンターテインメントの軽さの融合

はい本題です。
私が貫井作品の特徴を掴めているのかはいまいち不安ですが、『失踪症候群』には貫井さんの丁寧さが他作品と変わらずあって読みやすかったです。
ただ、サブエピソード的な描写がいつもより少ない気がしました。その分軽くさらさら読めるエンターテインメント性が足されている感じ。

事件の結末とは別の(勿論無関係ではない)ところで人間ドラマが展開されるので、事件だけがミステリ小説じゃない!という方におすすめ。

失踪した若者たちに共通点がある。その背後にあるものを燻り出すべく、警視庁人事二課の環敬吾は特殊任務チームのメンバーを招集する。私立探偵・原田征一郎、托鉢僧・武藤隆、肉体労働者・倉持真栄。三人のプロフェッショナルは、環の指令の下、警視庁が表立って動けない事件を、ときに超法規的手段を用いても解決に導く。失踪者の跡を追った末、ついにたどり着いた真実とは。悪党には必ずや鉄槌を下す―ノンストップ・エンターテインメント「症候群シリーズ」第1弾!

こういうキャラ立ちしている設定の話はどうしても読んでしまう…………原田さんかっこいいよ!


環さんに従順な3人が最高

普段は何の仕事をしているのかいまいち分からないけれど、実は秘密の特殊任務チームのリーダーの環さん。
そしてそのリーダーの指示に間違いなく応える訳アリの3人。
読みようによっては3人が環さんをある意味で盲信しているかのようなこの構図が好みすぎる……
本作は私立探偵の原田さんがメインですが、残り2巻あるということは……??


以下踏み込んだ感想。
ネタバレあります。



絶妙に気だるい日常の描写

いい〜。
具体的には吉住計志や馬橋の初登場シーンですね。
この前の記事にも書きましたけど、なんかもう、「ありそう」な日常描写が……
吉住さんの自由だけれど秘密を抱えた日々の不安定さがよく伝わってくる……
老若男女問わず人の気持ちを書くのがうまいよお……


倉持さんの第一印象が悪すぎて面白い

日野くん(子分呼ばわりされてた学生アルバイト)がちょっとかわいそう。
倉持さんが実はすごいやつだったというギャップ狙いにしてもかなり印象悪く映りました。笑 バイクの追跡シーンはかっこよかった。
武蔵さんの得体の知れなさいい……スリの技術あるところとか。残り2巻でたくさん出てきてくれればいいな。

ただこの2人の紹介をするためのエピソードなのに、主観の自分語りがリアル。
冒頭にサブエピソード少なめと書きましたが、このへんの事件と無関係な話の書き方はまさに貫井さん。


第1の黒幕馬橋さん

1番の謎を背負っているくせに馬橋さんのかませ感がすごいのは何故なんでしょう。
戸籍交換という頭脳プレーをやらかしておきながら、最後は泣きながら後悔して改心。不憫キャラ……
個人的に、馬橋さんのキャラと戸籍仲介という行為があんまり釣り合ってない感がありました。そのせいかな?


戸籍を変えてまで生きる強さは持っている

巻末の佳多山大地さんの解説にもありますが、この本の若者たちは「ひきこもり」ではなく「戸籍交換」という道を選んだ点で逞しいなあと思いました。
現実から逃げ出した先で、新しい世界をどこに求めるかという違い。
楽ではない道を通ってでも現実で生き直そうと思う彼らは、きっと愚かに逃げただけではない。


ゼックのみなさん

こっちがかませだと思ってたのにな……笑
蛇を巻き付けて威嚇してきた了さんは本当にかませでしたが。

了さんもなんか可哀想な人だなーと思いました。空気読めない所は置いといて、仲間だと思っていた人たちに金蔓扱いされていた所とか……
犯人一味にしたらウザくてしょうがなさそうなのも分かってしまうだけに、彼も不憫キャラ。
少しざまあみろと思ってしまったのは秘密。

何の警戒もせず鉢植え置かせてあげちゃったところはかわいかったです。


環さんの素性

気になる〜!!!
どういう経緯でこんなチームができたのか……創立秘話とか大好物なので……
そのうち語られると信じて、次巻読みます。笑


原田さんがいいパパ

最後、娘と仲直りできててよかったです。展開が読めててもほっとするのがハッピーエンドのいいところ。
真梨子ちゃんが警察不信になった経緯が結構細かく書いてあって、人間ドラマしてるなあと思いました。

真梨子ちゃんの入院先に訪れてくれる環さんめっちゃやさしい。


おわりに

ドラマ化してますね!!症候群シリーズ!!
『愚行録』に続く映像化の波に乾杯。

東海テレビ×WOWOW連ドラ『犯罪症候群』に玉山鉄二、谷原章介、渡部篤郎 - 映画・映像ニュース : CINRA.NET

2017年4月8日(土)から毎週土曜23:40~24:35に東海テレビ、フジテレビ系全国ネットで放送
監督:村上正典都築淳一
脚本:篠崎絵里子、谷口純一郎
原作:貫井徳郎『失踪症候群』『誘拐症候群』(双葉社
出演:
玉山鉄二
谷原章介
渡部篤郎
ほか

とのことです!やったね!

全3巻を2シーズンに分けてドラマ化するようで、この際にまた貫井作品の沼にいろんな人が落ちないかな〜と祈っております。笑
ただ2作目の『誘拐症候群』が1シーズンに含まれてるみたいなので、原作読み切るまでドラマは見ないようにしておこう……


最後までお付き合いいただきありがとうございました。


(追記)
この記事アップした直後に症候群シリーズの平積みを見つけてしまった 有頂天の文庫版も一緒にならんでいた お財布ゆるむ……

慟哭/貫井徳郎 を読みました

こんなミステリーが読みたかった

こういう暗くて読後感がお世辞にもいいとは言えない推理小説が読みたかったんだ!!!!!(大声)

百鬼夜行シリーズ(京極夏彦さん)も暗くて読後感も大体良くはないので激好みなんですけど、「推理小説」ではないのが違いかな〜と。事件は起きますけど。

貫井徳郎さんの本を読むのはこれで3冊目なのですが、絶対落ちました。完璧にハマってしまった……

連続する幼女誘拐事件の捜査は行きづまり、捜査一課長は世論と警察内部の批判をうけて懊悩する。異例の昇進をした若手キャリアの課長をめぐり、警察内に不協和音が漂う一方、マスコミは彼の私生活に関心をよせる。こうした緊張下で事態は新しい方向へ!幼女殺人や怪しげな宗教の生態、現代の家族を題材に、人間の内奥の痛切な叫びを、鮮やかな構成と筆力で描破した本格長編。

若手キャリアの課長をはじめとした警察サイドと、謎の男の視点が交互に語られていく構成になっています。
どこがどんな風に繋がるんだろう?と考えながらじっくり読むのがおすすめ。よく読むとしっかり「あれ?」という所が作られているよ…ちゃんと作ってある……


新興宗教組織の「ありそう」な描写を読んでほしい

作中に新興宗教組織が出てくるのですが、一歩引いた所にいる読者だからこそ分かる歪みが本当に「ありそう」な感じでいい。
少しやり過ぎ、誇張し過ぎな感じは受けましたが、99年の作品だからそう思うのかな〜と。18年前……

警察の中でも、「自分の方が立場が上だと散々アピールしておきながら、ふと弱気になって後から機嫌を取ろうとする」「わざわざ遠回りをして自分より出世するかもしれない後輩に嫌味を言いに行く」など、あ〜こんな人いてもおかしくない、という描写がいくつかあります。

貫井さんはこういう「いそうな人」「ありそうな場面」を書くのが上手いと思うんですね……
そこがデビュー作から既に滲み出ている。

以下好きなところを列挙。
ネタバレあります。



堂々と「ご落胤」呼びができる石上さんはファンキー

落胤ってなかなか聞かないですし言えませんよ。石上さんは度胸ありすぎ。
佐伯さんを邪魔に思いつつ、同じキャリアとしてノンキャリアのことを愚痴るこの関係性もよい。


警察とマスコミの微妙な関係性

まず説明が簡潔で分かりやすい。
岡本さんと谷尾さんのにこやかな駆け引き、いいなあ。

あと、岡本さんの息子が受験合格したところは唯一心が暖かくなりました。そして切なくなった……


教団の教えのこと

よくこんなにありそうな宗教のありそうな教えが思いつけるなあと思いました。
教祖の大演説とか、いかにも筋が通っていそうで面白い。
そして感動する何人もの聴衆。佐伯さんが「見つけた、見つけた」と涙を流していたんだと思うと切ない。
まず「信頼できる宗教」を探して縋りつこうとしている佐伯さんがつらい。

あのあと沙貴さんはどうなっちゃったんだろう……
というかどういう経緯で儀式の生贄になったんだろう……

司摩さんが裏ボスなのもよかったです。
沙貴さんに血を塗る時に愛しげな動きで歓喜の表情なのが、お前結局私欲だったのかい?と思いました。良き。
怪文書を送り付ける周到さもポイント高いです。宮崎勤の送った文書とぼんやり似ていると思ったら、参考文献にそれ関連のものがあって納得。


佐伯さんには同情するんだけど

浮気してるんですよねこの人〜!よくないねそれは!
出生とか、結婚の経緯とか、色眼鏡で見られていることに関しては本当に悲劇的で好みなんですけど……
頑張っているのに冷たい目で見られてしまうところとか……
しっかり浮気して自分の居場所をつくっているところに佐伯さんの強かさと人間味を感じる。


「佐伯」さんと「松本」さん

違和感もヒントもたくさん与えられている……やさしい……
あ〜あれはここのことか!とパズルを嵌めるように楽しく読めました。

  • 佐伯さんは婿入り(元々の苗字がある)
  • 松本さんは「職業柄3時間でも眠れればありがたいという日々を過ごしていた」
  • 度々松本さんが「どこかでお会いしませんでしたか」と聞かれている(警視時代の記者会見で見られている?)
  • やたら布施ができる程お金に余裕のある松本さん(警視時代の蓄え)
  • 利き手が左手
  • 粧子ちゃん殺害後の会見の佐伯さんは「語気を荒げ」、松本さんの見た会見の捜査一課長は「震える声」

この小説は再読に意味があると思います。ネタが割れた後でも2度悲しくなれる。
1度目の途中で正体に気づいても、この絶望感、虚無感は決して衰えないこの筆致。

「憶えてないんですか。あなたの息子さんが中学に合格したときに、私は言ったじゃないですか。『娘のこととなると気違いになる』って。忘れたんですか」
───『慟哭』松本/佐伯


おわりに

ちゃんと手がかりがあるミスリードよき。
そしてこの読後感。私好みすぎる。
『失踪症候群』もお迎えしたので、どんどん読んでいこう。どんどんハマっていこう。

最後までお付き合いいただきありがとうございました。

SRO1 警視庁広域捜査専任特別調査室/富樫倫太郎 を読みました

軽い読みやすさはテレビドラマのよう

私にとって初富樫倫太郎作品。
キャラ立ち、ストーリーのテンポがテレビドラマのようでとても馴染みやすいです。分かりにくいところがひとつもない。
警察小説初心者におすすめという感じ。

警視庁に新設された広域捜査専任特別調査室、通称「SRO」。総勢7名の小所帯にもかかわらず5人がキャリアという、管轄の枠を越えた花形部署のはずが、その内実は訳ありだった。山梨で発見された白骨死体をきっかけに、史上最凶の連続殺人犯「ドクター」を追う調査員たち。警察組織の限界に迫る、新時代警察小説の登場。

登場人物の個性が分かりやすいし、出てくる人数もそんなに多くないので混乱することもありません。
普通じゃない新部署っていう設定が個人的に結構すき。(ドラマ『SPEC』とか)


キャラクターを書きたい感じがある

当然主観ですが。
事件よりもキャラクターというか、警察組織のいろいろを書きたい感じを受けました。
これはシリーズものなので、1巻はメンバー紹介という感じなのかな?
勿論ストーリーは事件の捜査中心で進んでいくので、キャラ紹介ばかりで展開がだれるようなことは無いです。


尾形さん針井さんコンビがかわいい

ネタバレを極力避けてでもおすすめしたいのがこのふたり。すごいいいから。取り敢えず読んでほしい。
ふわっと説明しますと、2人とも結構反発的だったりトラウマ持ちだったりするけど、SROで過ごすうちに事件の捜査に協力的になっていくタイプの人です。跳ねっ返りからの協力です。
特に尾形さんは公式ツンデレ

以下踏み込んだ感想です。
ネタバレあります。



ちゃんとみんなに裏があるのがよい

唯一新九郎さんは裏表ない感じしますけどね。
麗子さんは事件絡みではないけど絶対に人に言えない秘密を持っているし、ただひとりまともそうだった川久保さんもちゃんとスパイしててよい。
特に富田さんの裏ボス感がドラマっぽくていいです。


針井さんの前世は多分名探偵

針井さんのゆくところ事件あり!
いいよーそのどんどんトラウマ抱えてく感じ。何度もいうけど1番すきなキャラクターです。


シリアルキラーはこうだという定義

作中何度も新九郎さんから発言される、「シリアルキラーは〜〜という特徴を持っている」「〜〜はシリアルキラーの習性」みたいな定義。

正直言って結構苛々しました。

いや分かるよ、統計的にはシリアルキラーは異性を殺すし同性を殺す時は止む無くの時だし、保守的で頑固だし、手口を変えることは少ないのは分かるよ。
でもそれをさも全てのシリアルキラーの特徴みたいに言うのは本当にやめてほしい。一応全てがこういう訳ではないって予防線張りながら喋る時もあるけど、これはかなり決めつけで喋ってはいないか?

日本にシリアルキラーがいないというのが決めつけならシリアルキラーの特徴を定めることも決めつけだと思います。
帰納法的な捜査をする(犯人はシリアルキラーかもしれない)のと、シリアルキラーの特徴を決めつけて捜査をする(シリアルキラーならこうするはずという予測)のは違うのでは。

結果上手くいったからいいけどさ。

そもそもエド・ゲインはそこで引き合いに出されるようなシリアルキラーなのかな麗子さん……
有名なのはその奇行であって殺しじゃないでしょ……


突然の犯人サイド視点

上でぐちぐち言ってしまいましたが、ご都合主義的展開はあまり気にならなかったです。
突然出てきた夫婦が明らかに犯人だとは分かるんだけど、それがつまらないという訳ではない。寧ろいよいよキターーという感じ。
沙織さんが捕まったのは笑いましたが、こういう展開もたまにはいいですね。定期的にこういうドラマが観たくなる。


おわりに

なんと4巻+エピソード0まで家に揃っているので、続きも読んでみようかなと思ってます。

最後までお付き合いいただきありがとうございました。