無知蒙昧

読みたい本をすきなだけ

SRO1 警視庁広域捜査専任特別調査室/富樫倫太郎 を読みました

軽い読みやすさはテレビドラマのよう

私にとって初富樫倫太郎作品。
キャラ立ち、ストーリーのテンポがテレビドラマのようでとても馴染みやすいです。分かりにくいところがひとつもない。
警察小説初心者におすすめという感じ。

警視庁に新設された広域捜査専任特別調査室、通称「SRO」。総勢7名の小所帯にもかかわらず5人がキャリアという、管轄の枠を越えた花形部署のはずが、その内実は訳ありだった。山梨で発見された白骨死体をきっかけに、史上最凶の連続殺人犯「ドクター」を追う調査員たち。警察組織の限界に迫る、新時代警察小説の登場。

登場人物の個性が分かりやすいし、出てくる人数もそんなに多くないので混乱することもありません。
普通じゃない新部署っていう設定が個人的に結構すき。(ドラマ『SPEC』とか)


キャラクターを書きたい感じがある

当然主観ですが。
事件よりもキャラクターというか、警察組織のいろいろを書きたい感じを受けました。
これはシリーズものなので、1巻はメンバー紹介という感じなのかな?
勿論ストーリーは事件の捜査中心で進んでいくので、キャラ紹介ばかりで展開がだれるようなことは無いです。


尾形さん針井さんコンビがかわいい

ネタバレを極力避けてでもおすすめしたいのがこのふたり。すごいいいから。取り敢えず読んでほしい。
ふわっと説明しますと、2人とも結構反発的だったりトラウマ持ちだったりするけど、SROで過ごすうちに事件の捜査に協力的になっていくタイプの人です。跳ねっ返りからの協力です。
特に尾形さんは公式ツンデレ

以下踏み込んだ感想です。
ネタバレあります。



ちゃんとみんなに裏があるのがよい

唯一新九郎さんは裏表ない感じしますけどね。
麗子さんは事件絡みではないけど絶対に人に言えない秘密を持っているし、ただひとりまともそうだった川久保さんもちゃんとスパイしててよい。
特に富田さんの裏ボス感がドラマっぽくていいです。


針井さんの前世は多分名探偵

針井さんのゆくところ事件あり!
いいよーそのどんどんトラウマ抱えてく感じ。何度もいうけど1番すきなキャラクターです。


シリアルキラーはこうだという定義

作中何度も新九郎さんから発言される、「シリアルキラーは〜〜という特徴を持っている」「〜〜はシリアルキラーの習性」みたいな定義。

正直言って結構苛々しました。

いや分かるよ、統計的にはシリアルキラーは異性を殺すし同性を殺す時は止む無くの時だし、保守的で頑固だし、手口を変えることは少ないのは分かるよ。
でもそれをさも全てのシリアルキラーの特徴みたいに言うのは本当にやめてほしい。一応全てがこういう訳ではないって予防線張りながら喋る時もあるけど、これはかなり決めつけで喋ってはいないか?

日本にシリアルキラーがいないというのが決めつけならシリアルキラーの特徴を定めることも決めつけだと思います。
帰納法的な捜査をする(犯人はシリアルキラーかもしれない)のと、シリアルキラーの特徴を決めつけて捜査をする(シリアルキラーならこうするはずという予測)のは違うのでは。

結果上手くいったからいいけどさ。

そもそもエド・ゲインはそこで引き合いに出されるようなシリアルキラーなのかな麗子さん……
有名なのはその奇行であって殺しじゃないでしょ……


突然の犯人サイド視点

上でぐちぐち言ってしまいましたが、ご都合主義的展開はあまり気にならなかったです。
突然出てきた夫婦が明らかに犯人だとは分かるんだけど、それがつまらないという訳ではない。寧ろいよいよキターーという感じ。
沙織さんが捕まったのは笑いましたが、こういう展開もたまにはいいですね。定期的にこういうドラマが観たくなる。


おわりに

なんと4巻+エピソード0まで家に揃っているので、続きも読んでみようかなと思ってます。

最後までお付き合いいただきありがとうございました。

積読のメモ

小さい頃は本を買ってもらったらすぐ読んだのになあ。
高校生の時、新しい本を読み始めた途端やたら忙しくなって1度その本から離脱してそのまま3ヵ月経過して以来、積読が当たり前の体になってしまいました。

とりあえずメモって多少の義務感を背負わないと暫く何も読まない気がする。なんか読みたいんだけどそんな気分じゃないんだよ。いざ読むところまでは行かないっていうか。複雑。読めばいいのに。


以下積読のメモ。

ペンギン・ハイウェイ/森見登美彦
恋文の技術/同上
きつねのはなし/同上
美女と竹林/同上

慟哭/貫井徳郎
失踪症候群/同上

SRO1/富樫倫太郎
告白/湊かなえ
奇妙な遺産/大村友貴美


最近家の本棚から発掘した親の本もたくさんあるので、そちらにも手をつけていきたい所存。

本読むの好きなのになあ。
私の中で本を読みたい時、テレビとか映画とか動画を見たい時、人恋しい時、勉強したい時、創造欲に溢れる時、何もしたくない時がそれぞれ周期的にぐるんぐるん回ってて、今の私は本を読みたい周期にいないらしい。

高校に入って一気にブラック部活に振り回されて、後半は読書なんてする気分にもならなかった。
がくんと読書欲が抜けてしまった。

読書に関しては1度始めちゃえばさくさく行ける質だから、その1歩が大事。

感想は書かずとも、まとめずとも、まずは読むところから。

映画『愚行録』を観ました

昨日の記事から読んでいただけるとありがたいです。
愚行録/貫井徳郎 を読みました - 無知蒙昧

しょっぱなからネタバレあります。
公式サイトはこちら↓
映画『愚行録』公式サイト


原作を綺麗に膨らませた映画化

映画よかった!!!!!
全体的にくすんでいるのに薄明るい色味が、ゆるく鬱っぽい感じを醸し出しているように思えました。
とりあえず妻夫木聡の横顔が美しかったです。

さすがに時間が足りなかったのか事件に直接関係なかったからか、いくつかのエピソードは削られていましたが、それでも違和感なく観ることができました。

反対に足された部分もありましたね。
田中さんが宮村さんをさらっと殺したあと、灰皿入れに尾形さんの煙草の吸い殻をシュートするシーン。
あれだけで一気にサスペンスっぽい雰囲気が足されてとてもよかったです。
シンプルに分かりやすく田中さんの狡猾さを示しているというか…

原作がいい意味で淡々としすぎてるので、ちゃんと映画化する意味があってよかったな〜と思いました。
説明無しにどんどん進んでいく感じは、原作の雰囲気が残されていてまた良き。


田中さんの表情が最高

終始もう勘弁してくれって顔してるのがほんと最高。
横顔最高。
はじめと終わりのバスのシーン、表情はほとんど変わらないんですけど行動がちゃんと対比されてて好きです。

溜め息つきながら喋るのもいい……厭世観丸出し……


宮村さんがやっぱりすき

原作読んだ時点で1番好きだった宮村さん。
やっぱり彼女のかませ感がたまらなかったです。ただ演じる臼田あさ美さんがやたら綺麗なので、こいつ許せない感は原作より少なかったです。笑

「やめてよ、人のせいにするの」
宮村さんがスタッフを叱るシーンも追加されていました。人間性が端的に表現されててよい……この映画の原作にはなかったシーンに外れはない……
それを聞いていた田中さんの呆れたような見下したような表情も最高です。

あと学生時代の彼女すんごい髪の毛さらさらでびびりました。美人。


光子にまとわりつく手がホラー

露出の少ない長袖長ズボンを身につけた光子と、謎の手にまとわりつかれる裸の光子の対比すごいと思いました。
ただ無表情で手にのまれていく満島ひかりさんの演技に、台詞も動きも何も無いのに圧を感じました。


ところどころに散りばめられた対比がいい

他人の愚かさを語る人間の愚かさってことなんでしょうか。
宮村さん&尾形さんの対談シーンが交互なのも、光子が白背景右向きで田中さんが黒背景左向きなのも意味深。
この映画はいろんなことを直接的にキャラクターに言わせず、カメラワークでぼかして伝えてくる感じがしました。


おわりに

いつもより内容が薄いですがこの作品をフィーチャーしたい気持ちは十分にあります。笑
原作とは展開が違いますが(特に最後の方)、それでも観てよかったなと思える素敵な映画化でした。監督さんは今作が長編デビューらしいので、また次の長編があればぜひ見てみたいです。

最後までお付き合いいただきありがとうございました。

愚行録/貫井徳郎 を読みました

気づいた時には飲まれている感じ

2月に映画化されました、『愚行録』。
映画『愚行録』公式サイト

遅ればせながら今日映画を観に行くので、つい先日読み終えた原作の感想をここにまとめておきます。
妻夫木聡たのしみ〜。

ええ、はい。あの事件のことでしょ?―幸せを絵に描いたような家族に、突如として訪れた悲劇。深夜、家に忍び込んだ何者かによって、一家四人が惨殺された。隣人、友人らが語る数多のエピソードを通して浮かび上がる、「事件」と「被害者」。理想の家族に見えた彼らは、一体なぜ殺されたのか。確かな筆致と構成で描かれた傑作。『慟哭』『プリズム』に続く、貫井徳郎第三の衝撃。

1年前に起きたとある惨殺事件についての関係者へのインタビューと、謎の女性によるモノローグのみで構成される本作。
地の文による情景描写がないだけに、インタビュイー達の口調や言葉に引き込まれます。
気づいた時にはさくさく読めてしまっている、というか飲まれてしまっている感じがおすすめ。


語られるだけだからこそ感じる怖さ

インタビューされる事件の関係者は6人。
淡々と語られていく被害者への評価の仕方がそのまま語り手の本性を表しているようで、斜め上から彼らを見下ろす気分で読みました。(という登場人物への評価)

語られる人だけでなく、語る人も浮き彫りにされていく感じがよい。とてもよい……

ただひとり語らない主人公に、映画ではどんな台詞がつくのか楽しみ。予告編で妻夫木聡喋ってたから喋ってくれますよね?笑
人々の闇、自分の闇を覗いた彼は一体何を語るんでしょうか。

以下心に刺さったところを列挙。
ネタバレあります。



ありそうな日常がたくさん出てくる

ママ友同士の会話とか、リーマン同士の会話とか、大学生の恋愛のいざこざとか。
語り手の分だけ色々な立場の色々な出来事が出てきますが、そのひとつひとつがやたらめったらリアルだなと思いました。

前半のママ友同士の微妙に険悪なエピソードだったり、田向さんの社畜エピソードだったり、直接事件に関係ないようなところまでものすごく練って書いている感じが伝わってきます。
すごいのは田向さんのどんなエピソードも今回の事件には一切関係がないこと。
奥さんの大学時代のエピソードは事件の核心に関係があるのに、他の話と同じように読んでしまって悔しい。笑


なんてえぐい大学時代なんだ

とてもじゃないけれど大学生になりたくなくなるエピソードの数々…
中学生の頃は大学生=ほぼ大人ぐらいに思っていましたが、実際まだ19とか20とかの子供なんですよね。
宮村さんや尾形さん、稲村さんその他大勢の大学時代の過ち、即ち愚行も、「若気の至り」の言葉がぴったりだなと思えます。

でもこの夫婦は違うんです。大学生にして既に人心掌握に長けまくっている。

この歳でここまで考えて他人を動かすのって並大抵のことじゃないですよ絶対。
でもぼんやりと田向夫人の生き方に憧れを抱いてしまった。常に人の輪の中心にいるって疲れると思うんですけど、彼女は楽しんでいたんだろうなあ。


1番印象に残った登場人物は

4人目のインタビュイー宮村さん。
自分が悪く思われないように予防線をいちいち張りながら喋ったり自分を超然としていたとか言ったりしちゃうところに加えて、途中でさらっと殺されるところがかませ感100%でとてもよいです。
内部生、外部生という単語がやたら出てくることに初読時はあまり違和感を覚えなかったのですが、読み返してみるとクラス内ヒエラルキー意識しまくりですね。いいね〜。

宮村さんの自分語りと元彼の尾形さんからの評価のずれが、まさにこの小説の雰囲気が凝固されているようでたまらない。


稲村さんの子供は

田向さんに目元が似ているっていういかにも意味深な稲村さんの息子。まだミルクを飲んでいて生まれたてっぽいところに闇を感じます。
少なくとも田向夫妻の子供よりは年下ですし…… 田向さんは最近まで稲村さんと会ってたってことになるんですかね。
この人たちが愚かなのか邪推してしまう私が愚かなのかもう分かりませんね。笑


主人公の心情やいかに

インタビューと殺人と妹の面会で多忙な主人公田中さんですが、自分の感情を表に出さず暗殺のように通り魔をやらかすところからして結構スペック高そう。

殺した相手の話をインタビューするのってすごくないですか……
どんな表情で、どんな風に殺したひとの話を聞いたのか気になる。
そもそも宮村さんが妹の話をしたその時の彼の衝撃や焦燥はどのようなものだったのか…… きっと主人公は感情が顔に出ないタイプ。

妹が初出した時点で近親相姦くさいなと思っていたのですが(偏見)、ほんとにそうだったのであ〜落ち着くべきところに落ち着いちゃったんだなあと思いました。
虐待の連鎖という言葉をご存知でしょうか。親に虐待された子供は虐待する大人に育つというような意味なのですが、この言葉は彼ら兄妹にも当てはまってしまうんでしょうね。切ない。

ただ冒頭の記事読み返したら妹35歳だったんですね。びっくり。もうちょっと下かと…

蛇足になります。海外の実話ですが、虐待の連鎖とそれによる殺人事件を紹介するページがあるのでリンクを貼らせていただきます。このサイトさんの文章はどれもとっても読みやすいのでおすすめ。ぜひ読んでほしい。
虐待の連鎖


じわじわと助走をつけて結末へ

根拠は分からずとも、途中途中に挟まれる妹が何かやらかしたんだろうなとは想像はつくんです。
ただそれが逆に後味の悪さを加速させている。
衝撃というより悪寒とか寒気とか、掴みどころがないけれどふと忍び寄るような結末でした。

人生って、どうしてこんなにうまくいかないんだろうね。人間は馬鹿だから、愚かなことばっかりして生きていくものなのかな。
───『愚行録』田中光

おわりに

どうせ読むならと思って、同じ作者の『崩れる―結婚にまつわる八つの風景』という短編集も読んだのですがとてもよかったです!
後味の悪さと一見本題と関係ないような(本当に関係ない時もある)エピソードのリアリティは『愚行録』が後をひく方なら必ず好きになってもらえるかと思います。

貫井徳郎さんハマりそう。

では、映画観てきます!

最後までお付き合いいただきありがとうございました。

ハッピー・バースディ/新井素子 を読みました

何故この本なのか?

今日は私の誕生日なので再読したのです。歳取りたくないよ〜〜!!

で、この本は新井素子さんの中でもかなり精神のやられる1冊です。
まずはあらすじから。

やさしい夫がいる幸せな家庭。そのうえ、小説家としても成功し、何にも不足のない日々だったのに…。何の意味もない、偶然の出逢いが、すべてを壊してゆく−。

新人賞をとったばかりの小説家であり、幸せな家庭を持つ梧藤茗こと後藤あきらと、ひとり暮らしで浪人中、束縛の強い母に怯える市原裕司。
対照的なふたりがただの偶然で出会ってしまったその日から、お互いがあるべきところに収まるまでを描いた話です。

ハッピー・バースディ。暖かみのある題名とは正反対の薄暗い結末は必見。

ぶっちゃけ誕生日に読む本ではない

分類としてはサイコホラー?
スマホが普及した今、手紙と固定電話の怖さが良くわかることうけあい。新井素子さんの三人称のような一人称のような文体がいっそうそれを助長します。

後述しますがメインのふたりのどちらにも肩入れできない感じなので、読む人を選ぶかも。
私は鬱々しいの好きなのでこの本も好きです。笑

以下心に刺さったところを列挙。
ネタバレあります。



同情できるけど共感は全くできない

あきらは紛れもない被害者です。流花ちゃんを巻き込むやり方は嫌だなとは思いましたが、まあ復讐するのも分かるし夫が死ぬってだけで普通に可哀想。

でも共感はできませんでした。

第1に、夫であるきーちゃんに依存しすぎてるのがこわい。自覚があるだけマシなのかない方がいいのか分かりませんが、全てをきーちゃんに依存している彼女の歪みがこわい。

第2に、新井素子さん特有の文体とマッチしすぎて口調が大分うざったくなっちゃっているところ。悪気は勿論ないだろうけど。

「も、すたすたすたすた、どんどんどんどん帰ってきて!もう電車ないよね、タクシーあたしが奢っちゃうから、しゃかしゃかずんずん帰ってきてっ」
(中略)
「おっけー。沢木のお義母さんからもらった梅干しのいいのがあるから、梅素麺作っとくわ。つけ汁に梅酢を混ぜて、ペースト状にたたいた梅干しと大葉を薬味にするから、おいしいぞおっ」

この独特なくどさね。この人の別の話の別のキャラだとあんまり苛立たないんだけど、依存気味のあきらがこれで喋るとなんかこわい。(酷い)
このころ「最悪の時」を過ごしていた祐司が腹立つのもまあ当然かなーと思いました。ストーカーはよくないけど。

私にとってあきらは、なんかとっつきにくくて知り合いにいたら多分苦手なタイプだけど、客観的に見れば大分可哀想な人。という感じでした。


遺書のところは共感できた

1行前と真逆なことを書きますが、笑 後半、あきらが遺書を書くのに悩むところ等は結構共感できました。

“生きているのが辛いし”、“生きている必要はないって思っていても”……それでもそれは、“生きているのをやめたい訳ではない”。──言い換えれば、“死にたくない”。“死ぬのは、嫌だ”。

わかるなーー。死にたくはないけど生きるのめんどくさい時ある。
このあたりのあきらなりの理論は結構分かりやすくて、これまでよりかなりすっきりした文章でした。


一方祐司はというと

こいつは許せませんなあ。彼にも同情する所多々ありましたが、許せない所もありました。

確かに彼は成長しました。受験とか家族関係で鬱屈としてしまって、そこにあきらの幸せを見せびらかされるようにされて思わず腹立てるところまではほんとに可哀想だと思いました。

でもやっぱり1度やったことは変わらないよ!(大声)
読み返す度に思うのですが、こいつの所業は悪戯にしてはやたら効果的すぎます。笑 偶然ってこわい。

また、地の文もあきらも「これは逆恨みだ」と述べてありますが、別に逆恨みではないと思います。
きーちゃんの死への直接的な原因ではありませんが、あきらの精神が救いようのないぐらい摩耗したのはたぶん祐司のせいだから。

反省してるかも怪しいってちょっと思っちゃうんですよね。全部正直に話して流花ちゃんに許してもらえてよかったねとは思うんですけど。
多分祐司と流花ちゃんのふたりが出した結論は間違ってないけど、お互いの事情を知っている読者としてはしっくり来ませんでした。

まああきらもあきらで自己完結してるので、この終わり方が1番なんでしょうね。


でも1番わからないのはこの人

祐司の母!!!!この人いやだ!!!!!!笑
終盤、祐司とお母さんが電話するシーンはなんかすっきりするので好きです。

そもそも祐司の鬱屈の原因は母にもある訳じゃないですか。この辺の事情についてはほんとに同情しました。

きーちゃんも客観的に見るとおかしい。
なぜあきらにそこまで…… 愛の力なんですかねえ。 現実から逃げないために敢えて文章を書かせるっていう思考がやばいと思います。この話の登場人物みんなちょっと歪んでます。

流花ちゃんはいい子なので幸せになって欲しい。


おわりに

誰にも共感できないけれどみんなの行動原理が分かるだけに怖いし切ないサイコホラー。

最後の壊れてしまったあきらは見てられませんね。あれが1番怖かった。
きーちゃんが望んでいた文章との関わり方では絶対ない。完全に現実から逃げきれてしまったんだなあ……と。


同じ作者で『おしまいの日』というのがあります。
こちらも依存型の奥さんの話ですが、「ハッピー・バースディ」と違ってひとりでどんどんどんどん突っ走っていく系の怖さ。また違う家庭内(?)ホラーをお楽しみの方にオススメ。

あと、星へ行く船シリーズというのがあるんですけど、ちょっと前に新装版が出ていたのでぜひお迎えしたいです。
文章も手直しされているようですし…… まあ私そもそも1巻しか読めてないんですけど……

ここまでお付き合いいただきありがとうございました。

陰摩羅鬼の瑕/京極夏彦 を読みました

今までの京極堂の心境を疑似体験できる気がする作品

陰摩羅鬼の瑕読みました!
前作とはまた違って、登場人物少なめ事件はひとつという全体的に静かな話でした(前作の祭り感がすごかったのもある)。
今回の事件は今までの百鬼夜行シリーズとは一線を画しているというか、まあ有り体に言いますと犯人役が容易に想像できるつくりになってます。
魍魎の匣の冒頭の事件と同じで、結局はあの人しか有り得ないという感じ。
その分京極堂の憑物落としのシーンが切なくて、いつも彼の腰が重たい心境が少し分かりました。

とりあえずあらすじを………と行きたいところですが、要約クソ苦手マンなのでまたWikiから貼らせていただきます。

白樺湖畔にそびえる「鳥の館」の主、由良昂允は、これまで4度にわたり新婚初夜か、その翌日に新婦の命を奪われてきた。そして5度目の婚礼を前に、婚約者・奥貫薫子の命を守るため、東京神田の「薔薇十字探偵社」の探偵・榎木津礼二郎に警護を依頼する。意気揚々と向かった探偵だが、旅先で発熱したため、急遽、小説家・関口巽が呼ばれる。昂允は、関口に非常に興味を持っていたため、2人を歓迎する。

一方で、過去3度「伯爵家花嫁連続殺人事件」を担当し、現在は東京に隠居する元刑事・伊庭銀四郎は、長野県警へと呼び出され、ひょんなことから知り合った中禅寺秋彦と共に、長野へと旅立つ。

探偵榎木津礼二郎は、関口と共に「鳥の館」に到着するやいなや、館の人々を見回すとこう叫んだ。

「おお、そこに人殺しが居る!」

https://ja.m.wikipedia.org/wiki/陰摩羅鬼の瑕

引用記法を覚えたとぅー。


話は分かりやすくて文章はくどいよ

とりあえず最推しの関口がめっちゃ出てくるのと、榎木津がもっと好きになれる話という意味でお勧めです!笑
ただキャラクターのせいもありますが、文章がやたらくどいと感じるところがかなりありました。なんだか昔の作品が読みたくなって、この本読んだ後思わず姑獲鳥と魍魎を読んでしまいました。
しかしいつも通りおぞましいびっくりポイントは押さえられていますし、鳥の名前が列挙されている箇所の雰囲気をぜひ感じていただきたい。
人が少ない分混乱する要素がないので、そういう意味では読みやすいと思います。


では、心に刺さったところをいちいち羅列していきます。関口主観多くてまじ嬉しいはあ〜。
以下ネタバレです。



めんどくさい奴らが出会ってしまった

初っ端から「伯爵」由良昂允と関口の対話シーンで始まる本作ですが、ほんとこのふたりめんどくさいですね。笑
塗仏あたりから薄々感じていたのですが、個人的にこの話は初期の百鬼夜行シリーズより文章がくどい印象があって、それも相まってとんでもなくこいつらめんどくさいなと思いつつ読みました。
とにかくひとつの事について超喋るんですよ。主題はひとつなのに話題がどんどん枝分かれしていく。

でも関口巽めっちゃ好きです……

由良昂允さんの主観のシーンありますが、彼の闇に気づいてからはすごく何度も読み返してしまいました。ハマりました。
ちなみに私は昂允さんの読みが覚えられなくて何度も裏表紙を見返したクチです。


伯爵と鳥たち

最初鳥たちが剥製だとはっきり書かれるまで、鳥たちが生きてるのか剥製なのかちょっと考えながら読んでました。
鳥たちの初出は伯爵の主観で語られるんですよね。伯爵からすれば鳥たちは生きているので当然ですが、結構考えさせられました。笑

それにしても鳥の種類が多い!鳥の名前が列挙されるところの圧迫感ったらないです。こわい。


ほんとに榎木津失明してる???

榎木津は柄にもなく発熱して失明とかいう弱々しいところを見せたかと思ったら、見えないなりにめっちゃ動くし終いには乱闘とか始めるので彼はやばい(語彙)。

今までもまあ同じようなことはありましたが、今回は元華族の方々と接するということで、彼の異物感が引き立ってて好きです。彼も元華族のひとりですけど。

案の定クッキー出されてて笑いました。

あと、タツミ呼びでびびりました。お前名前覚えてんじゃねえか……


伊庭さんがかっこいい

伊庭さんかっこいいです。またキャラ増えやがったとか思って申し訳ないです。

前作で鳥口が京極堂と多々良さんに挟まれてて大変そうでしたが、今回の被害者は伊庭さんでしたね。笑
柴くんがんばれ〜。

現場入りした時が最高にかっこよかったですね。仕事が早い人好きです。すぐに人員把握して手慣れた感じで指示しててまさに独壇場。

伊庭さんが亡くなった妻にこうすればよかったとかありがとうを言い損ねたとか後悔する度に切なくなりました。魍魎が木場さんで塗仏が京極堂なら、この事件はきっと彼の事件だと思っているのですが、この話の終わりで伊庭さんの心が軽くなっていればと思います。


関口巽が報われた

見出しと関係ない話ですが、まずびびったのが彼の作品がフルで読めてしまったことですね。感動。
本文と違ってやたらテンポがいいので読みやすかったです。笑

ところで彼は前作からこの本のある部分まで散々な目にあっていました。
その最たるものは警察に冤罪で引っ張られ拷問紛いの取り調べを受けたことでしょう。
この本の中でも、私は壊れたとか汚らわしい私の肉体から染み出る穢らわしい体液とか、今までにない程やたら彼が鬱状態なことが自己申告されますが、それが浄化されたのはきっと伊庭さんの事情聴取のシーンではないかと思います。

関口は泣きそうな顔になった。
ちゃんと──。
感情がある。
こいつはまともだ。

ここでガチ泣きしました。同時に伊庭さんがめっちゃ好きになりました。
姑獲鳥の「こいつは狂いだよ」を思い出してまた泣きそうです。

詳細に聞けば解り難いことなどない。関口の取った行動は首尾一貫していて、しかも論理的なものだった。

引用ばかりで申し訳ないですがほんとにこのシーン好きです…… 関口巽は報われたと感じました。よかったね。


犯人が分かっている故のつらさ

今回の肝はここではないかと。
お隠れになっています(強調する点がしっかり振られている)、無くなりました、とか意味深な表現のオンパレードで、静かな狂気がみえる……と思って読んでいたのですが、よく考えたらこれは狂気ですらないです。
彼、伯爵にとっての常識というだけで狂気じゃない。この辺がもう切ないです。
まあ人殺したのは事実なのでしょうがないとは言えませんが、悪意がない事件を解くのはしんどいでしょうね。

京極堂が「此方側の作法です」「其方側で暮らすのですか」って伯爵に語りかけるところが個人的に刺さりました。


おわりに

以上感想でした。次は百鬼夜行陰を読みたいのですが本棚にいないのでかなしい。見かけたらお迎えしよう。


ここまでお付き合いいただきありがとうございました。

塗仏の宴/京極夏彦 を読みました

はじめに

最近こんな暇なの人生最後なんじゃないか?ってぐらいものすごく暇な期間に突入しているので、積読だった本を読み倒しています。
で、読んだ本のレビューをつい探してしまい、つい梯子してしまい、つい自分でも書きたくなってしまったので試しに書いてみる次第です。

本題

京極夏彦さんの「塗仏の宴 宴の支度/宴の始末」を読みました。これまでこのシリーズ読んでてよかった〜と熱いものを感じました。特に宴の始末の方のオールスターズ感がとんでもないですね。
このシリーズに関してはキャラ萌えで読んでいるところがものすごくあるので、キャラクター達の一挙一動にいちいち声援を送りながら読みました。

あらすじはまとめられない程長いのでWikipediaから引っ張らせていただきます。(他力本願)


ぬっぺっぽう
関口巽は妹尾友典の紹介で元警察官の光保公平と出会い、韮山にかつて存在したという「戸人村」の調査を依頼される。光保によればかつてそこで駐在を務めていたが、戦後戻って来てみるとその村は存在そのものが抹消されていた。関口は地元の警官・淵脇と、道中で出会った流浪の物書き・堂島静軒と共に、韮山を訪れる。そこで彼らが目撃した真実、この世にはありえるはずの無い存在のものとは…。

うわん
一柳朱美は神奈川を離れ、静岡に身を移して暮らしていた。ある日、村上兵吉と名乗る男の自殺未遂現場に出くわし、彼を救って介抱する。彼はある過去の事情から「薬売り」に対して恐怖を抱いていた。同じ頃、隣人の松嶋ナツの下には「成仙道」という新興宗教の勧誘が毎日のように来ていた。騒ぎを聞きつけた朱美が少し外へ出てナツと話している最中、村上が再び自殺を図る…。

ひょうすべ
関口巽京極堂の同業で先輩でもある宮村香奈男と知り合う。彼は知り合いの加藤麻美子という女性が祖父のことである悩みを抱えていることを京極堂に相談に来ていた。麻美子の祖父は最近怪しげな新興宗教のような団体に気触れ、財産を注ぎ込んでおり、彼女は祖父をその団体から脱退させたいのだという。しかし、彼女もまた華仙姑処女という謎の占い師に心酔し、多額の寄付をしていた。

わいら
中禅寺敦子は韓流気道会という道場の取材を行い、それに関する記事を掲載した。本人は好意的に書いたつもりの記事だったが、韓流気道会から大反発を買い、門下生らに付け狙われることになってしまう。そんな中、敦子は華仙姑処女と名乗る女と知り合う。彼女もまた韓流気道会に狙われているのだという。二人で必死に逃げるが、人気のない路地に追い込まれ絶体絶命に。そこに榎木津礼二郎が現れる。

しょうけら
木場修太郎は行き付けの酒場「猫目洞」の女主人である竹宮潤子から三木春子という女性を紹介される。彼女は工藤信夫という男からストーカーの被害を受けており、困っているという。相談に乗ることにした木場が詳細を尋ねると、毎週、工藤から春子宛てに手紙が送られてきており、そこには春子の一週間の行動が綿密に書き記されているという。春子の部屋を調査するも、覗き見が不可能であることが分かっただけだった。

おとろし
織作茜は織作家の遠縁と名乗る羽田隆三という男と織作家の家や土地に関する商談を行っていた。羽田は言い値で家や土地を買い取る代わりに自分の部下になるようにと迫ってきていた。そんな中羽田は部下に静岡県韮山の辺鄙な土地を買うように迫られ疑念を抱き、榎木津礼二郎に調査を依頼しようとしたがすっぽかされ、代わりに茜と秘書の津村信吾を韮山に行かせる。

https://ja.m.wikipedia.org/wiki/塗仏の宴_宴の支度

関口巽は殺人容疑で逮捕。榎木津礼二郎木場修太郎は行方不明。中禅寺敦子は何者かに連れ去られてしまう。そんな中、京極堂の指示で事件のキーパーソンらを集めるべく、青木文蔵、鳥口守彦、益田龍一の三人は静岡県韮山に足を運ぶ。しかし時既に遅く、「成仙道」、「韓流気道会」、「太斗風水塾」、さらに華仙姑処女、藍童子、尾国誠一らが続々と韮山に集結し、さらには地元警察も巻き込んで大乱闘を繰り広げていた。そんな中、京極堂もまた川島新造らを伴って韮山へと向かう。消滅した村、「戸人村」。そこに数千年前から居るという不老不死「くんほう様」とは一体何者か。村人五十人鏖殺事件は本当にあったのか。様々な謎が解きほぐされ、ついに姿を現した黒幕、「ゲーム判定者(ジャッジ)」と京極堂の戦いが始まる。

https://ja.m.wikipedia.org/wiki/塗仏の宴_宴の始末

あらすじから長いですね。本編も長いです。笑
あと〇〇ページしかないけどまとまる?大丈夫?と心配しながら読み進めました。
長い分心に刺さるしんどい所がたくさんあったのでいちいち羅列していこうかと思います。めっちゃ長いですすみません。
以下ネタバレあり。



宴の仕度

ぬっぺっぽう

まず関口が語り手で嬉しい!個人的に彼がいる時の安心感はすごいです。
この百鬼夜行シリーズの3巻目、「狂骨の夢」の最初の方は知ってる人が全然出てこない……という感じで寂しかったのですが、初っ端から京極堂と愉快な仲間達側の人が出てくるとなんだか読みやすい気がします。

光保さんの「この世には不思議なものがまだまだあるのです」という台詞には早速ぞわぞわきました。京極のアンチテーゼだ〜!
京極堂以外から妖怪の薀蓄聞くことになるとは思いませんでしたが、結構読みやすかったです。

そしてこの作品のラスボスである堂島大佐の登場。京極堂と似て非なる感じに一気に引き込まれました。
喋り方から言葉を自分のものにしている感じが伝わってきて、京極堂のにおいがする!何者!という感じ。
「世の中には不思議でないものなどないんですよ」で、もう興奮せざるを得ません。
あと、熊田老人の家で仕送りの封筒を見せてもらった時に、関口がいろいろ考えてるのを背にすぐに家を出てしまうじゃないですか。この辺で、榎木津の人を置いてけぼりにする所と京極堂の話術がいい感じにマッチしてる人だな〜と思いました。

ラストで関口が逮捕された時、どうせ後編の中盤あたりで釈放されんだろとか思ってましたが最後まで出てくるシーンありませんでしたね。笑 雪絵さんとどんな会話したか気になる。
この巻ではひとつの話が終わる度に関口の独白みたいなものが挿入されますが、なんかもう見てて辛かったです。
あとこのシーンやたら反復表現あるな〜と思いました。めっちゃ好きです。

うわん

朱美さん!
自殺の動機や殺意の誕生について語ってるところ(219ページあたり)に「魍魎の匣」を思い出しました。

如何にかなるものなら如何にでもしているのだ。如何にもならないからこそ、そして如何にもならぬと知っているからこそ、人はその理不尽を何とか形にしようと腐心するのだろう。それが何かの瞬間、些細な契機で凝固したものが殺意なのだと、朱美はそう思う。だからその時その瞬間は、憎悪も怨恨もないのだ。そしてその、まるで瘧のような殺意が、外に向いた時は他人を殺めるような行動となり、内に向いた場合は己を殺める行為となる──単にそう云うことなのではないのか。

朱美さんは魍魎の匣全然関係ないですけどね。笑 彼女もこんな考え方で嬉しかったです。

それにしても村上家関連もなかなかにしんどいですよね。ある時一気に崩壊するのって徐々に崩壊するのとどっちがいいんでしょうね。
ここで後催眠のトリックでてきますが、この話催眠万能すぎだろとちょっと思いました。まあ推理小説というより雰囲気を楽しむ小説として私は読んでるのでそこまで気になりませんでしたが……

ところでうわんって何なんですかね。どこかに書いてあるのを読み落としてるんでしょうか……ちゃんと調べてみよう。

ひょうすべ

京極堂と関口が喋ってて安心感がすごい。恒例の京極堂妖怪談義はじまりますね。
これまた恒例の「不思議なことなど何もないのだよ」もいただきました。この中でかなりさらさら読めた話のひとつです。

わいら

敦子ちゃんが主体ですね。幼少期に兄である京極堂と殆ど暮らしてないのを知って衝撃でした。仲良くて全然そんな気見えない。
あと敦子ちゃんの考え方というか生き方が綴られていて、ただの好奇心旺盛な女の子じゃないんだなあと。さすが中禅寺妹。
お兄ちゃん痛いよ。で死ぬかと思いました。(2回目)

またこの話の榎木津かっこよいですね。綺麗な顔して体術に長けてるところがいい。
益田さんがちゃんと助手してるのもいい。

しょうけら

妖怪談義ながい。笑
ぞわぞわする話でした。騙されている方が騙している構図がすごい。本末転倒という今回のテーマがよく理解できました。

このあたりでもう後催眠でしょ?後催眠でしょ?と勘ぐりながら読んでましたが、やっぱり薄々分かっててもぞわっとくるラストでした。

あと藍童子のビジュアルが好みすぎてびびりました。

おとろし

茜さん登場に衝撃!葵さんの事を語るのが切ない……
茜さんと多々良さんの初対面の時に、多々良さんめっちゃ喋るなあと思ってたら茜さんも同じこと思ってて安心しました。

織作家の神像には駿河富士と下田富士が相応しいっていうのがこれまた切ない。自分で認めててつらい。この姉妹つらい。

堂島さんが茜さんに浄蓮の滝の話をするところ。女郎蜘蛛の話するなんてもうなんかフラグでしかないです。笑 ここもぞわぞわきました。

またラストシーンで、茜さんがお風呂で謎を推理してるところ。「──私も生き残りだ。」が切ないにも程がある。ほんと辛い。絡新婦読んだ時点ではよく分かってませんでしたが、この話で茜さんが好きになりました。殺されちゃいますけど。


宴の始末

人がとにかく多い

上下2冊ぶっ続けで2日間で読みましたが、ほんと人と組織が出てきすぎて頭大混乱でした。間空けて読んだら何も分からなかったと思います。笑
2周目はメモリながら読んでみようかな。

とにかくこんなに人数出してどうすんだと思いましたが、さすがにちゃんと意味がありましたね。こんなオチ予想できませんでした。

あと、この巻では三人称だと思わせといて一人称の部分が結構あって、いちいち驚きながら読みました。笑

関口がつらい

最初の方で茜さんの事件について警察が喋ってるところがほんんんとしんどかったです。関口めっちゃ言われ放題で。
こっちがつらくなりました。でも確かにクソ怪しいですね。笑
関口にとって、こういう畳み掛けられるみたいに責められるのは1番きついんじゃないかな……

木場さんと青木

木場さんのくだりもしんどい。青木が「いつになったら信用してくれるんですか!」って言うところとか。
木場さんは本心から自分を嫌っていたかもしれないと不安になるところでは、もう不安になるなよしんどいなあ〜!と青木の背中を叩いてやりたくなりました。
でもその青木の「木場さんなんか自分の肝臓に訴えられれば必ず有罪ですよ」発言は笑いました。本人いないとはいえ容赦ない。

溢れ出るオールスターズ感

中盤(?)で京極堂の家にみんなが大集結するところあたりからは、オールスターズかよと思いました。
敵だけじゃなくてこっちサイドもめっちゃ出てくる。
内藤、伊佐間さん、増岡とどんどんどんどん出てくるんでほんと笑いました。お前もか!お前もなのか!

盛り上がる妖怪談義

多々良さんと京極堂が喋るところはいつもよりテンポよくて、なんか前知識あるのとないのでは全然違うんだなあと。京極堂楽しそうでなにより。こんな状況なのに微笑ましい。

もはやなんでもつらい

上記のシーン、多々良さんと京極堂のふたりにただただ圧倒されていたのですが、敦子ちゃんがいなくなったのを知った時の鳥口がよかったですほんとに。益田も生涯忘れないやつ。

あと木場さんと榎木津に、心配してくれる青木とか益田がいてよかったねと思いました。
前述の青木もそうだし、益田が榎木津がいなくて心細いと感じるところに師弟関係を感じる……

ていうかこの話の青木益田鳥口たちがほんといいんですよね。下僕組。
自分たちの軽挙妄動に反省したり、それぞれの師匠(?)を心配する余りやらかしたり。鳥口が「薔薇十字団だ」とにやりと笑うところの興奮は言葉になりません。

関係ないですがゼロ戦の話する青木もつらかったです。特攻崩れ…… 青木が怒鳴るとか思ってなくてほんと心に来ました。

なんでこんな何でもかんでもつらいのかといえば、多分これが中禅寺自身の事件だからなんですよね。
今まではこんなに感情移入して読んでこなかったんですけど、この話では京極堂サイドの人たちが巻き込まれてつらい目に合ってるからかものすごく感情移入してしまいました。

ラストシーン

色々吹っ飛ばして謎の開示の部分についてですが、いやーーもうさすがですね。家族のモチーフがそこかしこで出てましたがここで結実するのか〜という感じでした。
尾国がさらっと死んでしまったので拍子抜けな感はありましたが、それよりも藍童子が大人びすぎなのが気になりました。笑 いやこういうキャラめっちゃ好みなんですけど。
京極堂の手口仕込まれてればこういう子にもなるのかな…… 京極堂が藍童子を叩くところも、京極堂の情が垣間見えてつらかったです。

堂島大佐は中国で何してきたんでしょうね。彼のこれまでとこれからが気になる。
こんなラスボス然としたキャラがこのシリーズに出てくるとは思いませんでした。他の話に比べて対決感がすごかったです。


おわりに

長々と(考察ではなく)感想を述べましたが、まだ初読の状態なので2周目したいと思います。メモを携えて。笑
でもそれも次の巻読んでからかなあ。本棚から陰摩羅鬼の瑕の視線を感じます。笑

気分がノってる時じゃないと京極作品って読めないんですよね。流れに乗ってこのまま読んじゃおうかな。

ここまでお付き合いいただきありがとうございました。こんなにだらだら書くかは分かりませんが他の作品の感想も書けたらと思ってます。